ブラジルにおける遺伝子組み換え大豆を巡る最近の動向

 ブラジルでは南部のリオ・グランデ・ド・スル州を中心に遺伝子組み換え大豆(GM大豆)が生産されているが、その生産が条件付で合法化されたのは、2003年3月26日付暫定措置令第113号(2003年6月13日第10,688号として正式法令化)が定められた以降である。同法令は当該年度内に収穫されるGM大豆の生産・流通を期限付きで認めるものであったが、翌年も同様の暫定措置令を制定することで、事実上、ブラジルのGM大豆の栽培は認められてきた。ブラジルにおけるGM大豆の生産は、もともとルーラ大統領が2003年1月に就任するにあたり、南部の農家を中心に生産が解禁されるとの予想で見切り発車的に拡大したものである。ところが、最終的に政府が遺伝子組み換え農産物に関する規則を定めたのは、2005年3月24日付法令11,105号(通称:バイオ安全保障法(Lei de Bioseguranca))であり、政権発足後2年以上が経過したのちのことだ。
 

[次年度の生産に向け証明付き大豆種子が不足]

 ただし、このバイオ安全保障法が制定された以降、その細則の未整備や現実問題への対応で次年度産大豆の栽培については依然として不安が残っている。2005年度産大豆については、2004年10月21日付法令5,250号により2006年1月末までの栽培・流通が認められている。それ以降についてはバイオ安全保障法に定められるところであるが、同法で中核機関に定められた、科学技術省傘下のCNT-Bioの活動も細則が整備されるまでは制限されている状況だ。現実問題への対応という面では、既存の法令5,250号とバイオ安全保障法によりGM大豆の栽培にあたり条件づけられた、政府による証明付き大豆種子の使用の問題があげられる。GM大豆の生産の割合が最も高いリオ・グランデ・ド・スル州では、この証明付きの種子の供給量が不足している。そのため連邦政府は2005年9月6日付法令5,534号により、同州についてのみ本来は破棄するべき自家使用に供する大豆種子、つまり政府が証明していない種子を使用した2006年度GM大豆栽培を認めた。農務省のガブリエル・アルベス・マシエル農畜産防疫局長によれば、リオ・グランデ・ド・スル州が保有する証明付き大豆種子の数量は、遺伝子組み換えでない従来種のものが100万俵(1俵=40キロ)、遺伝子組み換えの大豆種子が60万俵で、同州で必要とする種子量の10%程度という。同州では、もともとは多くの大豆が非合法下でGM大豆種子により栽培されてきたこともあって、新たな証明付き種子の需要量自体が大きい。今回の措置は、州内の証明付き種子の供給量が十分な水準になるまでの経過的措置とされ、2007年度産大豆の栽培期には証明付き種子での栽培になることが見込まれる。

 なお、ブラジルで栽培されるGM大豆種子については、モンサント社が開発したラウンドアップ・レディが代表的だ。ブラジルで同種子を栽培に使用する生産者は、技術使用料をモンサント社に支払わなければならない。2006年度産用GM大豆種子の最終的な技術使用料は判明していないが、8月時点で1キロの種子に対して0.88レアル(1ドル=2.3レアル)となっている。しかし、前年度の収穫で得られた多量の種子を大豆生産者が保有しているリオ・グランデ・ド・スル州では、モンサント社の種子を生産・販売する企業の判断で、大豆生産者に対する使用料を割引するとみられる。 

 国際的な農業技術関連団体ISAAAの推計によれば、2004年のブラジルのGM大豆栽培面積は500万ヘクタールと、2003年の300万ヘクタールから大幅に増加している。法令の整備が進んだことで、さらなる栽培面積拡大が予想される。同推計によれば、GM農産物の国別栽培面積について、米国4,760万ヘクタール、アルゼンチン1,620万ヘクタール、カナダ540万ヘクタールと、ブラジルは世界第4位のGM農産物生産国に位置づけられる。

(出所:農林水産省 海外農業情報
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by ishiinohiyoko | 2005-11-02 09:57 | 動物福祉と環境
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