生物が飢えると細胞が自分の一部を食べる自食作用(オートファジー)というしくみが、細胞内の異常なたんぱく質を分解するゴミ処理装置としても働くことを、東京都臨床医学総合研究所などがマウスで証明した。アルツハイマー病などの治療につながる可能性がある。
自食作用とは細胞が内部のたんぱく質をアミノ酸に分解し、栄養とすることで飢えをしのぐというしくみである。しかし、栄養状態にかかわらず日常的にもわずかだが起きており、その理由はなぞだった。
同研究所の水島昇プロジェクトリーダーたちはマウスの遺伝子を改変し、全身で自食作用を起こらなくした。するとマウスは、神経と肝臓の細胞に異常なたんぱく質がたくさんたまり生後1日で死亡した。
神経細胞だけで起こらなくすると、生後1カ月でうまく歩けなくなり刺激に十分に反応できない運動障害がみられた。脳の神経細胞には異常なたんぱく質の塊がたまっていた。これらは人間のアルツハイマー病やパーキンソン病、ハンチントン病などの神経変性疾患と似ていた。
大隅良典・基礎生物学研究所教授は「自食作用のしくみや役割にはなぞが多かった。神経変性疾患との関連がマウスでわかったのは重要な成果だ。その制御のしくみが解明されると、神経疾患の治療や老化の予防につながるだろう。」と話している。
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