農業と動物福祉の研究会の2005年4月24日(日)ワークショップ(5月にOIEの世界動物福祉基準が決定される)での話題提供と4月26日(火)第81回日本チャンキー技術セミナール乾杯時挨拶内容
「鶏のストレス改善と動物福祉への取り組み」
国際獣疫事務局(OIE)への関心の高まり
国際ルールの関心はコーデックス食品規格委員会から国際獣疫事務局(OIE):
(世界動物保健機構)の国際動物衛生規約に2001年(コーデックス委員会総会で有機畜産物の生産、加工、表示、及び販売に係るガイドラインが選択された年)から移っている。
OIE 2001―2005年の長期計画の主たる課題が「動物福祉」と「食品の安全」となっている。その結果として、2005年OIE総会で「輸送、食用と殺、淘汰と殺に関する各種福祉」が決定される予定になっている。次に飼育管理福祉基準、最後に実験動物と野生動物の基準作成へと続く。この5月総会にて、畜舎福祉基準が2005年/2006年の重点課題に決まるという情報もある。
鶏肉生産用鶏の飼育管理福祉についてのEu規則が2006年1月実施される方向性にある。コーデックス有機畜産物ガイドライン(2001年選択)がEu有機畜産規制(2000年実施)より1年遅れて承認されたように、OIE規約も同様のことが起ころうとしている。
表1にOIEとコーデックス比較をまとめてみた。個人的意見として、消費者、生産者と事業者に行政関係者が世界ルール(コーデックスとかOIE)の作業部会とか総会資料をアメリカのように公開(農林水産省のホームページ等)し、広く意見を募集し、世界ルールに対して参加コメントを発信し、また作業部会の委員を送っても良いのではないか。それにより消費者、生産者と事業者のために生きた日本ルールと国際貿易ができるのではないかと思う。
品質とストレス
まず、海外の動物福祉担当役員の話を紹介する。
世界最大手の畜産生産業者タイソン社(アメリカのブロイラー生産羽数20%シェア、日本総生産羽数の3倍以上の20億羽生産)動物福祉役員、ファルグラフ氏(DR.KELLY PFALZGRAF)と国際鶏卵委員会(The International Egg Commission)委員のマデレイ氏(Julian Madeley)は2005年1月米国アトランタ養鶏展(世界最大の展示会)のセミナールにて次のように話している。
ファルグラフ氏「アメリカ食肉協会(American Meat Institute)の動物福祉委員長」は「近代畜産は家畜の環境を変えたので、各社執行役員は家畜の愛情(care)と福祉(well-being)に責任を持つ必要がある。野生動物は自然環境で自分を守っていけるが、今日の家畜は生産物目的に育種改良されており、野生で生きられない。そこで、生産農家は十分な飼料、水、快適さと健康管理をし、ストレスを減らし、世話をしなければいけない。動物福祉について何が正しいか十分な科学的根拠が必要である。探しているのは、我々の意見でもなく、福祉活動家の意見でもなく、顧客の意見でもない。それは科学(science)である。」とスピーチしている。
マデレイ氏は45カ国から成る国際鶏卵委員会(IEC)(本部ロンドン)の委員である。彼はOIEから専門的意見を求められていると話す。
「OIEの役割は動物の病気を越えて、動物福祉へと拡大を始めている。そこには動物の良い健康は良い動物福祉に関係があると言われている。OIEは畜舎と飼育管理の基準づくりを始めており、採卵について、IECに専門的意見を求めてきている。IECは全米鶏卵生産者協会(The United Egg Producers)の福祉プログラムをモデルとして使っている。IECはケージ鶏舎を鶏舎の基本としている。」
次に、品質とストレスについて、チャンキーブロイラー管理マニュアルから表2を引用した。このストレス軽減対策は科学的に鶏舎、設備、飼料等でかなり進んできている。育種改良による3Kgブロイラーに育つまでに要する日令遺伝能力推移(表3)によれば、選抜・淘汰による10年後の増体は限界に来ているのではないだろうか。
鳥インフルエンザ(AI)について、病気に感染しないことが鶏の健康には重要である。過去2年間の日本でのAIモニタリング検査により、AIは日本には常駐化していなく、日本はクリーンであると判明した。今後、隣国からの防疫が一番重要となっている。
表2:ブロイラーの発育と品質に影響を及ぼす要因
免疫状態
給餌・給水
換気・温度
収容密度
健康状態
表3:3kgブロイラーの日令推移(推測)
1994年 2004年 2009年 2015年
55日 46日 41日 限界
― ▲9日 ▲5日 ―
株式会社イシイの取り組み
表4をご覧頂きたい。
20年前の1984年、グループの事業シェアは雛・鶏肉:周辺=95:5であった。
2004年シェアは雛・鶏肉・周辺:オーガニック・バイオ=90:10となっているが、2009年見通しは65:35となる。知識と技術を要求される分野(科学的根拠)として、環境保全と動物福祉面においてオーガニックとバイオを今後更に追求していきたい。
表4:株式会社イシイの取り組み ( www.ishii-co-ltd.jp/ )
経営理念 環境保全と動物福祉を考え、関係する人と動物の生活をより良くする。
見通し 2004年 2009年 オーガニック・バイオシェア拡大(18%→60%)
オーガニック 2004年会社シェア1% → 2009年には10%へ
有機鶏肉と有機農産物を使用したオーガニックペットフード(環境保全と動物福祉を考えた有機ペットフード)、はりま原種・種鶏鶏卵とコマーシャル雛生産(国産鶏)
バイオ 2004年17% → 2009年には50%へ
レイヤー・ブロイラー・ワクチン卵業界でのワクチン卵内接種、自動卵内雌雄鑑別システムとワクチン卵生産(卵内バイオとワクチン卵)
情報通信 2004年6% → 2009年には10%へ
鶏舎と飼育設備、鶏の水と餌の摂取・鶏体重等のデータ測定・収集、応用情報通信(生産農家へ鶏生産鶏舎・システムと消費者へ鶏の健康状態情報化)
雛・ブロイラー 2004年76% → 2009年には30%へ
完全防疫種鶏場とワクチン卵内接種済コマーシャル雛とブロイラー生産(薬にたよらない元気な雛と鶏)
組織運営 ISO9001(2000年版)からISO22000移行(2006年)
推進本部(経営品質環境管理部と研究開発室)東京
推進本部(経理部)徳島本社
ECO事業部(オーガニック)東京、はりま事業部(オーガニック)栃木、
ワクチン卵事業部(バイオ)鹿児島、イノボ事業部(バイオ)岩手、
サンテン事業部(情報通信)徳島、種鶏・孵卵・営業事業部(雛)徳島
ブロイラー事業部(ブロイラー)鹿児島
グループの見通し
3つのテーマ
2004年:オーガニックとバイオ(10%)、周辺(29%)、雛・鶏肉(61%)
2009年:
オーガニックとバイオ(35%)、周辺(30%)、雛・鶏肉(35%)環境保全・動物福祉(理念)、技術・知識(科学)、海外(語学)
平成17年4月24日 株式会社イシイ 竹内正博