今年も残すとところあと一日となりました。
来年は2022年、「2」が多い一年、「ニ」コっと(笑顔)が多い
一年になるようにしたいものです。
日本のブロイラーの主な鶏種であるチャンキー種において
生産成績は日本が世界的に見ても「よい」といわれていますが
その「よい成績」とはどんなものなのでしょうか。
例えば生存率や、歩留まり(一羽からとれる正肉量)、
出荷日齢の短さ、単位面積当たりの収益など
経済性および効率性を極限まで求め、行きついた境地ですが
北米では新たな価値観として「よい肉用鶏」が着目されています。
12月27日付で、World Poultryに興味深い記事があったので
ご紹介します。
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Welfare group to bring a ‘better broiler’to the marketplace
Through its Better Chicken Project, GlobalAnimal Partnership
has coordinated an independent research study aimed tocreate
a framework for reinventing the modern-day broiler.
ウェルフェアグループがよりよい肉用鶏を市場にもたらす
グローバルアニマルパートナーシップは、そのベターチキンプロジェクトを通じて、
現代の肉用鶏を再発明するための枠組みを作成することを目的とした独立した
調査研究を組織した。
北米の動物福祉基準およびラベリング組織であるGlobal Animal Partnership
(以下G.A.P)は、グエルフ大学の科学者が実施した調査は
「これまでで最大かつ最も包括的な学際的調査」であり、
さらにこの調査には16の異なる遺伝的系統由来の
7,500羽以上の肉用鶏の情報が含まれていることを
報告した。
福祉の科学的評価の根拠は肉用鶏の品種に帰する
現代の肉用鶏は、効率的な成長とより高い胸肉収量のために
遺伝的に選抜されている。しかし、これは肉用鶏の福祉についての
懸念を引き起こしている。
この問題に取り組むための最初のステップとして、
この最初の学際的研究では、16の異なる系統にわたって肉用鶏の健康
福祉、行動、肉質、および生産性を評価をおこなった。
このようなベターチキンプロジェクトの基礎研究のフレームワークは、
肉用鶏品種の福祉属性の科学的評価の根拠を形成するのに
役立だった、とG.A.P.は述べている。
承認された肉用鶏の品種
この研究の結果は、G.A.Pの肉用鶏評価プロトコルの開発と
ベターチキン適格品種の初期リストを導くために使用された。
承認された肉用鶏の品種は、特定のオスとメスの種鶏の組み合わせである。
G.A.Pは承認されているのは以下にリストされている特定の交配であり、
個々の雌雄の種鶏系統や、逆の組み合わせではないことを忠告している。
G.A.Pはこの最初のリストは完全なリストを意味するものではないとし、
繁殖会社にこれらのプロトコルを使用して追加の品種をテストするために
G.A.Pにコンタクトを取るように求めている。
承認された品種 | メス系統(種鶏) | オス系統(種鶏) | |
Aviagen Ranger Classic | Aviagen Ranger | Aviagen Classic | |
Aviagen Ranger Gold | Aviagen Ranger | Aviagen Gold | |
Aviagen Ranger Premium | Aviagen Ranger | Aviagen Premium | |
Aviagen Rowan Ranger | Aviagen Ranger | Aviagen Rowan | |
Cobb-Sasso 200 (CS200) | Cobb 500 | Sasso C441 | |
Cooks Venture Pioneer | Cooks Venture Pioneer | Cooks Venture Pioneer | |
Hubbard JA757 | Hubbard JA57 | Hubbard M77 | |
Hubbard JA787 | Hubbard JA87 | Hubbard M77 | |
Hubbard JACY87 | Hubbard JA87 | Hubbard ColorYield | |
Hubbard REDBRO | Hubbard REDBRO | Hubbard M77 | |
Hubbard Redbro M | Hubbard Redbro M (mini) | Hubbard Redbro |
適格とみなされた肉用鶏の品種は、グループの今後の
肉用鶏基準v4.0で詳述されているように、G.A.Pのプログラムは
移行される。G.A.Pのエグゼクティブディレクターである
Anne Malleau氏は、次のように述べている。
「この調査は、私たちの考え方を確認して情報を提供し、
「より良い肉用鶏」を市場にもたらためのプログラムの
プロセスを作成するために必要なデータを提供した。」
使用された品種(すなわち、遺伝学)を考慮することは、
肯定的な動物福祉の結果を得るのに不可欠な要素であると
グループは言っており、5段階あるG.A.Pの福祉基準にも含まれている。
G.A.Pプログラムの品種適格性を判断するために、
証拠に基づくアプローチに切り替えたかったとしている。
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上記の承認された品種を見ると日本のブロイラーを大半を占める
Aviegen社(チャンキー社)のRossブランドは含まれておらず、
主に日増体の低い、放牧などで使用される品種が
名を連ねています。
世界的にウェルフェアレベルが低いとされる日本は
今後どのような選択をするべきなのでしょうか。
毎日暑い日が続きますが、熱中症に気を付けながら
過ごしたいものです。
さて、最近よく平飼い卵やケージフリーの卵の話題を
よく見かけますが、みなさんはいかがでしょうか。
外食チェーンのイケヤ、ホテルチェーンの
ハイアット、ヒルトンなどの
外資系企業は2025年までに店舗で使用する卵を
すべてケージフリーに切り替えると宣言しています。
従来型ケージ飼育の閉じ込められた悪いイメージから
「ケージフリーになった!鶏が幸せな卵ね!」と脱却し
消費者受けしているのか、急速なニーズの高まりに
生産が追いつくのか心配です。
現にスターバックスコーヒーは2020年までに米国、欧州、日本、中国の
2万店舗ですべてケージフリーに切り替えると宣言してきましたが
HPを見る限り、サステナビリティを重視していますが
ケージフリーに切り替えたとの文字はありません。
今回は春季鶏病技術研修会で高瀬先生が紹介された
従来型ケージ飼育と非ケージ飼育の福祉性評価を
行った研究成果が大変興味深い内容だったのでご紹介します。
H.J.Blokhuisらの調査によると、従来型ケージ飼育、エンリッチドケージ飼育、
平飼い、放牧の4方式の飼育を比較した結果、
平飼いと放牧において、つまり非ケージ飼育は
ケージ飼育と比較し、高死亡率で内部寄生虫が多く、
脚の炎症が多く、産卵率もケージ飼育に劣り、
過敏な反応を見せるとの結果でした。
加えて従来型のケージ飼育における、砂浴び行動、木止まり行動、就巣行動の
発現が制限されていることも示していました。
またブラジルの研究機関が6年間にわたり、16か国、
6040鶏群、1億7600万羽を対象に行った調査では、
別の結果が出ていました。鶏群の飼育方式内訳は
従来型ケージ飼育が3066群、エンリッチドケージ飼育が1341群、
エイビアリ―飼育が1633群で、
非ケージであるエイビアリ―群の死亡率は、調査開始当時は高かったが、
60週令までの累積死亡率は年々改善し、6年でケージ飼育群との
優位差がなくなってきた、というものでした。
つまり、ケージ飼育に比べて歴史の浅いエイビアリ―の
高い死亡率は改善の余地があり、生産者の努力により、
年々改善されたと推測できます。
これら2つの研究結果を踏まえ、日本の採卵鶏生産者は
高まるケージフリー卵需要にどう対応するのでしょうか。
非ケージシステムの高死亡率は技術的な改良により
ケージシステム同等に低下させることは可能ですが
生産者はケージフリーに切り替えたはじめは
高死亡率=生産性の低下のリスクを負うことになります。
生産性が低下した分、卵価格に転嫁することを消費者は
許容するのでしょうか。
H.J.Blokhuisらの調査でも
福祉性と生産性において負の要素が最も少ないのが
エンリッチドケージ飼育であるとの結果でした。
従来型ケージ飼育の構造上の福祉問題を解決したものが
エンリッチドケージ飼育であり、福祉性と生産性を
両立していることを、もっと消費者、顧客に情報発信する
必要があるように思います。
コロナのワクチン接種が各地で進んできましたが
みなさんは接種されたでしょうか。
これで本当にマスクフリーな生活ができるといいですね。
一日も早くコロナは収束してほしいものです。
さて今回は、一般のテレビでも報道されるほど話題となった
OIE会議での採卵鶏のアニマルウェルフェアについて
決議されたことを取り上げたいと思います。
予定では前回紹介した春季鶏病技術研修会での高瀬公三先生の
話題提供の続きを取り上げる予定でしたが
次に繰り越したいと思います。
採卵鶏は、国によって比率に違いがあるものの、
全世界的には未だに従来型ケージ飼育が多く、
行動の制限など、その福祉問題が指摘されています。
他の畜種に比べ設備の影響を直接的に受けているため、
国際的なルール作りにおいて議論が紛糾しています。
OIEガイドラインを基に日本でもアニマルウェルフェアに
対応した飼養管理指針(資料①)が作られたように、各国のAWの基礎となる
本ガイドラインは加盟国が守れる最低限の基準であり、
「アニマルウェルフェアと(各畜種の)生産システム」として
2012年から採択されてきました。
肉牛は2012年、肉用鶏は2013年、乳牛は2015年、
豚は2018年にガイドラインがすでに規定されています(資料②)。
5月末に開かれたオンラインのOIE会議では
「アニマルウェルフェアと採卵鶏生産システム」が議論され
事前委員会がまとめていた4次案がそのまま採択されるであろうと
関係者の間では推察されていました。
その内容は様々な飼育様式を認めた上で、「止まり木、砂浴び場および
巣箱(ネスティングエリア)の設置が望ましい」というものです。
鶏の強い行動欲求を満たすための資材の設置の必要性を
訴えるものです。
3次案では止まり木などを「設置すべきだ」という文言がありましたが
設備改変=コスト増加を懸念する国からの反対意見にも考慮し、
4次案では「望ましい」という記述になっていました。
しかし、それすらも反対する国が出てきたのです。
賛成が46%、反対が35%、棄権が19%で
決議に必要な3分の2の賛成が得られなかったのです。
反対した国は鶏卵の主要生産国であるメキシコ、ペルー、
コロンビアの中南米の国々でした。
メキシコの平均賃金はアメリカやスイス、ルクセンブルクの
およそ3.6分の1であり、その彼らにさらなる負担を強いることを
批判するジャーナリストもいるようです(資料③)。
OIEガイドラインは世界のAW基準となり、
国内での採卵鶏業界に与える影響も大きいので
今後も動向を注視していきたいと思います。
参考資料:
資料①公益財団法人畜産技術協会 > 資料・報告書 > アニマルウェルフェア > アニマルウェルフェアの考えに対応した飼養管理指針
http://jlta.lin.gr.jp/report/animalwelfare/
資料②OIE Terrestrial Code Online Accsess > Section 7 Animal Welfare
https://www.oie.int/en/what-we-do/standards/codes-and-manuals/terrestrial-code-online-access/?id=169&L=1&htmfile=titre_1.7.htm
資料③20210602The 'no to cage-free' at the OIE from some Latin Americans _ WATTPoultry.pdf
初夏のような暖かい日が多くなってきましたが
皆様いかがお過ごしでしょうか。
鳥インフルエンザは収束したように見えますが、
新型コロナ肺炎感染症は依然として感染拡大し、
緊急事態宣言の延長や各地方においても
警戒レベルをあげて対策が取られている昨今です。
今回は、春季全国鶏病技術研修会において
「養鶏分野におけるAW対応」というテーマで
鹿児島大学名誉教授の高瀬公三先生が話題提供されていたので
一部ご紹介いたします。
鳥インフルエンザや豚熱などの世界的に流行感染する
動物の疾病のコントロールや蔓延予防を目的とする
OIEという国際機関があります。
OIEは動物を健康に飼育するためにはアニマルウェルフェアの
確保は重要であるとし、飼育管理や輸送・と殺などについて
ガイドラインを各畜種について定めており、加盟している
197の国と地域は遵守することが求められています。
肉用鶏のアニマルウェルフェアに関するガイドラインは
2019年に更新されており、捕鳥の際に「首または翼を
つかんではいけない」という文言が入っているとの報告でした。
しかし日本の養鶏生産現場では、鶏を個別に健康確認する場合や
またワクチネーションを実施する場合など、
翼をつかむことが多いのが現状ではないでしょうか。
ここでいう捕鳥とは出荷時、鶏をコンテナに入れる際の
取り扱いを想定していますが、日本で使用されるコンテナは
入り口が小さく、一羽一羽入れなければならず
足を持つことで暴れて翼の骨折や損傷が発生する可能性が高く、
今の日本には不適合のように思われます。
翼をもつのであればもう少し入り口の広いコンテナに
変えるなど検討が必要と思います。
以前、アメリカで捕鳥を行う現場を見たときは以下の写真のように
複数羽の脚をもって運んでいるところを目にしました。
コンテナの入り口も大きく、日本の方式とは全く異なっていました。
写真1.「捕鳥作業員はアニマルウェルフェア技術の訓練を受けており、捕鳥中に鳥が傷ついた場合は罰金が発生する」と説明
写真2.機械による捕鳥(CMC社、イタリア)
世界的には写真1の方式や機械による捕鳥が多く(写真2)
OIEのガイドラインに取り込まれたように思います。
鶏舎の間口が狭く、大型機器も入れることが難しいのが
現状ですが、少しずつ生産現場における意識改革をする
必要がありそうです。
高瀬先生の講座について、次回でも取り上げたいと思います。
参考資料:
写真1:捕鳥専門業者 Chicken Roost
https://www.youtube.com/watch?v=N34PBtqBj9k
写真2:CMC社、イタリア
https://poultry.cmcindustries.com/index.php
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