急に秋らしくなってきましたがいかがお過ごしでしょうか。
さて、今年の夏を振り返ると、、、とても暑かったですね。
「今年の夏は異常に暑い!」と毎年言っている気がしますが
地球温暖化の影響でしょうか。
このような暑さでは鶏も豚も牛も、バテてしまい摂食量が落ちたり、
熱死が出ないように暑熱対策をしたり、農場は管理が大変だと思います。
農場の管理ではないのですが、
ブロイラーの輸送時の水の噴霧と強制換気が
ブロイラーの肉質を改善するという記事を見つけたのでご紹介します。
2020年9月17日World Poultryの記事です。
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Pre-slaughter measures impact furtherprocessing
屠殺前の措置は加工処理に影響を与える
輸送時の(輸送かごに)拘束の状態で強制換気と同時に
水を噴霧すると、加工後の肉の品質が向上することが分かりました。
これまでの研究によると、夏に輸送されるブロイラー鶏胸肉の
保水能力、インピーダンス、および微細構造は、
飼育中の熱ストレスが減少した場合に優れていることが
すでに分かっています。
急性熱ストレスは、pH、調理損失、保水力の低下など、
肉の品質の低下につながる可能性のある要因の1つに
すぎませんが、
慢性的な熱ストレスは、骨格筋の損傷とタンパク質の
機能性の低下をもたらし、さらなる処理後の収量の
低下をもたらします。
家禽肉の冷凍/解凍
貯蔵寿命を延ばし、肉の品質を維持するために、
冷凍は最も重要で広く使用されている保存方法です。
しかし、解凍中に肉にいくつかの変化が起こり、
凍結融解による水分の損失(ドリップロス)もその1つです。
水分保持力の低下は、肉の種類と凍結速度の影響を受けます。
水噴霧冷却と強制換気
生きている鳥の熱ストレスはブロイラーの福祉と
経済の問題であり、輸送後の食肉処理場での保管期間中に
水噴霧と強制換気を使用することで制御できます。
これは、暑い夏の条件で多くの国で適用されます
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日本の食鳥処理場では待機場に大型ファンやミストがついている
ところが多くありますが、強制換気ではなく
空気を循環させているイメージがあります。
肉の品質低下が見られた場合は、今後の酷暑に向けて
対策を取る場合の参考になれば幸いです。
残暑が厳しいですが皆さんお元気でしょうか。
年々暑くなる夏にうんざりですが、
熱中症対策をしっかりしながらのりきましょう。
前回のブログで、鶏が自由に行動できる平飼いは
高福祉で、消費者のニーズも高まっていますが
生産工程において手間がかかるため、企業養鶏ではなく
個人や家族経営などの小規模であれば実現する可能性が
高いとの話題に触れました。
平飼い及びエンリッチドケージの有用性を検討した実験は海外では
多くありますが、国内では研究事例が少なく、
アニマルウェルフェアの普及に公的に取り組む
公益財団法人畜産技術協会が発行している
「アニマルウェルフェアの考えに対応した採卵鶏の
飼養管理指針第4版」でもそれぞれの飼育方法について
平飼いでは個体管理及び衛生面、
エンリッチドケージでは闘争行動の増加及び生産性との関係に
ついて「研究の余地がある」としています。
そして、近々八ヶ岳農場大学校において、採卵鶏の平飼い、
エンリッチドケージ、放牧の実験が開始されることがわかりました。
世界で一番高い福祉レベルの養鶏を目指しており、
小規模生産者が実践を学べる場としても期待されます。
実験では鶏舎の中で採卵鶏はケージいれず、止まり木や巣箱などを設置して
飼育する平飼いと、エンリッチドケージ(詳しくは前回のブログで)に
入れて飼育する方法と、主に屋外で放牧し餌、水、巣箱などの必要な
資材はトレーラー型鶏舎にあり、鶏が自由に外と
中を行き来でてき、放牧地が傷んだら、
場所を変えることができるトレーラー型鶏舎による放牧飼育。
トレーラー型鶏舎がコロナや商品不備の関係で輸入が遅れて
いますが、導入できれば国内初の試みになるとのことです。
どんな実験結果が出るのか今から楽しみです。
お盆を前に気の抜けない日々が続いていますね。
加えて、熊本県や山形県での大雨被害も甚大です。
被害に遭われた方々におかれましては、
お見舞い申しあげるとともに、1日も早く
復旧が進むことを祈っております。
さて最近、職業柄のせいかも知れませんが「平飼い卵」
や「ケージフリー卵」という言葉をよく目にしますが
皆さんはいかがでしょうか。
イオンがプライベートブランドで平飼い卵の販売を開始した
ことは業界に大きな影響を与えそうです。
日本国内でアニマルウェルフェアの普及活動を行っている
HOPE for ANIMALsのH Pによると
57の企業がケージフリー卵(*)に
移行すると宣言しています。
https://www.hopeforanimals.org/eggs/cage-free-companies-in-japan/
その内訳は外資系の外食およびホテル、小売店と
個人経営されている菓子店や平飼い卵を売りとして
卵生産から加工商品の販売まで行っている企業、
有機農業などの安全な商品のみをこだわりをもって
取り扱う小売店などです。
その中で気になったのが、ケージフリー卵に
移行できている企業が未だ36/57件という点です。
その多くが外食で、卵の仕入れ先が固定されていて、
規模も小さく、量がそれほど多くないから移行できたのでは
ないでしょうか。
一方、スターパックスやネスレ、インターコンチネンタルホテル
など外資系大手企業は、恐らく海外本部からプレッシャーは
かけられているが、国内では9割がケージ飼育卵なので
数が確保できない状況と推測できます。
では、なぜ平飼い卵の生産は少ないのでしょうか。
それは、平飼い卵を大量生産するのは難しいからです。
ワクチンの接種、鶏の成長段階に応じて鶏舎を移動させる
場合など、平飼いでは多くの時間と労力を割きます。
そして何より従来型ケージ飼育と比較すると
単位面積当たりの生産量=収益が減るので、生産者としては
なかなか踏み切れないのです。
ここまで平飼い卵の話ばかり論じてきましたが、
AWに配慮した卵は平飼い卵だけでありません。
鶏も休む時は止まり木に止まりたいし、
羽毛の汚れを防いだり、清潔に保つための
砂浴びが大好きです。また産卵する時は少し暗い
ところの方が安心して卵を産めます。
このように鶏の本来の行動を満たす資材を取り付けたケージを
エンリッチドケージ(写真1)と言います。
鶏の行動の自由を保ちつつ、生食可能な卵を効率的に
生産するシステムとしてエンリッチドケージ飼育も
一つの有効な方法と考えられています。
独立行政法人家畜改良センター岡崎牧場で行われた
エンリッチドケージの有用性を検討した実験では、
従来型ケージ飼育より「悪癖による死亡」と「へい死率」が低く、
快適な環境下で多く発現する「羽繕い」が多く、
実験用ケージの器具調整の不足により破卵率が
エンリッチドケージで高かったが、
飼料要求率や産卵率は区間に差がなく、上記の点を
改善すれば生産性は従来型のケージ飼育と
同等であることが分かったそうです。
平飼いは開放的で行動が自由なのは確かですが、
日本の生卵文化に適応し、鶏と消費者、そして生産者も
幸せな生産システムはどれなのか、深く考えていきたいですね。
*:ケージフリー卵
ケージシステムではない方法で飼育された卵。
鶏舎内の平飼いやエイビアリーシステム(写真2)、
屋外の放牧など。
エンリッチドケージもケージシステムなので不可となる。
写真1、2とも「なんてこったィ!!ナチュラおじさんブログ」より引用。
新型コロナ感染拡大の緊急事態宣言が解除されて、
先週末から県境を超えての移動が可能になり、
普段の生活に戻りつつありますね。
しかしウィルスが消えたわけではないので
三密を避けることやマスクの着用など
最低限のマナーは守りたいものです。
さて今回は昨年大流行した豚熱(今年2月に豚コレラから改名)
について取り上げたいと思います。
昨年9月から今年の3月まで主に中部地方の養豚場と
野性イノシシで発症し、約16万頭の豚が殺処分されたという
ニュースを覚えている方も多いと思います。
豚熱はコレラ菌とは関係がなく、人に感染せず、
また万が一感染したものを人が食べたとしても、
害はないとされています。
しかし家畜伝染病予防法により、感染した家畜、
また感染していない場合でも予防的に殺処分される
ことになっています。
家畜感染症予防法を守るための必要な対策として
家畜衛生管理基準が定められていますが、
豚熱の予防対策として、野生のイノシシとの
接触リスクがあるという理由で「放牧制限の準備」
という項目が加わる可能性がありました。
一部改正後の飼養衛生管理基準案
https://search.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000195225
しかし、放牧の方が豚熱の感染リスクが高い
という科学的根拠は示されておらず、
加えて、豚熱が発症した58件の農家のうち56件が
舎飼い農家で、残り2件は2重柵を設置していなかった農家で、
加えて非加熱の飼料のなかにウィルスが混入していた可能性が
指摘されています。
今回の改訂にあたり生産者への説明や意見の収集が
なかったことや世界的にアニマルウェルフェアが
重視されている中で「正常行動を発現する自由」を
保証する放牧を制限するのは
逆行する案だとする反対意見(パブリックコメント)が
動物愛護団体のみならず、生産者、研究者、消費者から多く
寄せられたことにより、「放牧制限の準備」は撤回され
「大臣指定地域においては、放牧場について
給餌場所における防鳥ネットの設置及び
家畜を収容できる避難用の設備の確保をすること」
が明記されました。
https://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/eisei/bukai_44/attach/pdf/index-8.pdf
野生イノシシが豚に近づくとしたら主な理由は、
餌を欲しているからです。
放牧養豚に余分な餌は与えず、給餌後に
餌は食べ切ったかを管理者が確認すれば
警戒心の強いイノシシはわざわざ来ることはないと思います。
牛の放牧風景は牛乳のパッケージとしてよく使用されていますが、
それは消費者も放牧の飼育方式が理想的だと
思っている証拠です。
放牧がイメージだけのものにならずに済み
安堵している生産者がたくさんいると思います。
そういう生産者を消費者として応援したいものです。
新型コロナウイルス感染症の拡大の影響で
緊急事態宣言が5月末まで延長され、
自粛の日々はしばらく続くことになりましたね。
普通の生活をしているだけでも不自由を感じますが
医療関係者の皆さんとそのご家族は
感染リスクに耐えながらお仕事されています。
そのおかげで医療が誰でも受けられる、そのことに感謝ですね。
「感謝をする」とオキシトシンという快適ホルモンが分泌され
免疫力アップにもつながりますよ。
さて、前置きが長くなりましたが、新型コロナウィルス
感染症の影響で一年延期になった東京2020。
その選手村で提供される食品には食料調達基準に
アニマルウェルフェアへの配慮などを求めた規定(フードビジョン)が
あることをご存知でしょうか。
東京2020の基準ではレベルが低くパフォーマンスに影響を与えるので、
高品質な食材を提供してほしいとの嘆願書が
9名の有力な海外五輪選手から出されています。
このフードビジョンは2012年のロンドン
オリパラから始まったもので
2016年リオデジャネイロオリンパラでも継承され、
レガシーとして引き継がれています。
しかしこのままでは「日本は対応しなかった」と
負のレッテルを貼られることになります。
嘆願書では
「動物の扱いを懸念すると同時に、私は、人間のこと、
人間の健康、栄養のことも懸念しています。
アスリート人生の最高の舞台であるオリンピックには、
世界からトップクラスの選手が集まるので、
高品質の栄養素が求めれるのは当然です。
選手の食べるものが競技の結果に直結します。
最高品質の栄養が、最高の結果をもたらします。
飼育過程にストレスが含まれたグレードの低い栄養では、
それなりの結果しか出せません。」
(本文https://legacyforanimals.com/letter-jp/)
この中ではっきりとウェルフェアレベルが低いこと=低品質品と
なっており、このままでは日本の畜産品は
低品質と評価されてしまうのは残念です。
今回改善の要望が出されたのは採卵鶏のケージ飼育と
妊娠豚のストール飼いです。
ロンドンオリパラのでは放牧卵か有機卵(*1)、
妊娠豚のストール飼育の禁止が実行され、
リオデジャネイロオリパラでは、
ケージフリー卵(*2)の提供と妊娠豚のストール飼いは
大手企業が自主的に取りくみ対応したようです。
今回の問題点は、嘆願書の受け取りを小池都知事とJOCが
拒否したことだと私は思います。
これは「日本はあなた方の意見に賛同するつもりはない
(AWは対応できていない)」と受け取られる対応です。
嘆願書に署名しているのは1万5000人のオリンパラ選手の
うちわずか9名です。
わずか9名の意見であってもダイバーシティー(多様性)を
多用していた小池知事には受け取ってもらいたかったですね。
日本にはアニマルウェルフェアに対応していると
胸を張って言える地鶏が地方の各地にいます。
放し飼いで出荷日数も長く、飼育期間が長いため
後期から産卵する鶏もいます。
コロナの自粛が続く中、外食への出荷量が多い
地鶏が過剰になっているとよく耳にします。
出荷数が限られますが、地元に行けば卵も売っているし、
選手村で提供するもの100%の準備は難しいかもしれませんが
イスラム教徒用のハラルのように、
選択肢として用意できるのではないでしょうか。
妊娠豚のストール飼育については改善していくことが
必要ですが、全く対応しなかったとなると
負のイメージしか残りません。
一年延期になったことで調整ができ、
9名の選手が最高のパフォーマンスができればと
切に願います。
*1:鶏に有機飼料を与えて、
屋外で放牧しながら育てながら採卵された卵。
*2:従来型・エンリッチドを含めたケージ飼育ではなく、
エイビアリーシステムなど鶏舎の中を鶏が自由に行動できる
システムで生産された卵。
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