新型コロナウイルス感染拡大予防のため、
全国に緊急事態宣言が発令され、また生活が変わってきました。
そんな中でも食べることは変わりません。
農産物の生産関係者、スーパーなどの小売店の方々は
本当に大変な状況だと思います。
どうか体調に気をつけながら過ごしてください。
また養鶏関係者におかれては、高病原性鳥インフルエンザの
流行もアメリカ、アジア各国、東ヨーロッパで起きており
気の抜けない状況です。
今回のコロナ禍で実感するのは、感染症の流行はいつ、
どこで、どのように広がるのか予測がつかないということ。
そんな中、イギリスの研究機関が鳥インフルエンザの
リスクの低減効果が期待できる抗体の合成に成功した
との記事があったので、一部を紹介します。
少し専門的な内容ですが読んでいただけたらと思います。
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Influenza antibodies reduce disease in chicken
インフルエンザ抗体が鶏の病気を減少させる
World Poultry,2020年4月7日
科学者たちは、家禽に投与してインフルエンザの
症状を軽減できる合成抗体分子を設計しました。
この分子(抗体)はまた、環境に放出される
インフルエンザウイルスの量を減らし、
家禽におけるインフルエンザの負担を軽減するための
免疫療法治療として有用である可能性を示唆しています。
英国サリーのPirbright 研究所のチームが実施した
この研究では、鳥インフルエンザ(AI)のH9N2株に
対する合成抗体の生成が含まれています。AIは、
突然変異によって新しい宿主に適応する能力があるため、
家禽とより広い鳥類および哺乳類種の両方に重大な
リスクをもたらします。
一本鎖可変フラグメント抗体(scFv)として知られる
改変された抗体セグメントは、ラボ実験において
組織培養の細胞にH9N2ウイルスの侵入を
阻害することが示されました。さらなる試験では、
scFvで鼻腔内を免疫したニワトリはウイルスのレベルが低く、
治療を受けなかったニワトリと比較して体重の
減少が少ないことが示されました。
scFvs抗体は、インフルエンザウイルスの
外側にあるヘマグルチニン(HA)と呼ばれる、
宿主細胞の受容体に結合するタンパク質に
結合することで機能します。これにより、
ウイルスが細胞に侵入して複製するのを防ぎ、
感染した鳥を迅速に保護することができるのです。
scFVを作成するために、チームはインフルエンザ
ワクチンでマウスを免疫し、H9N2ウイルスを
中和するマウス抗体の産生を引き起こしました。
次に、HAタンパク質に結合する抗体の2つの
セクションの遺伝暗号を配列決定しました。
彼らは遺伝子工学を使用して、これら2つの
セクションをリンクし、1つの新しい抗体分子(scFv)を
作成しました。これらのより小さな分子を
生成することにより、チームは抗体全体を使用することで
生じる問題を克服することができました。
「これらの結果は励みになり、scFvsがインフルエンザの
臨床的兆候と感染した群れにおけるその広がりを減らし、
家禽からヒトへの感染のリスクを減らす迅速かつ効率的な
方法を提供できることを示しています。」 – Munir Iqbal教授
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この記事の中でも出てきましたが、人間の生活は
多くの動物(家畜、マウスなどの実験動物など)に
支えられています。生命に関わる場面以外にも
ペットなどの可愛い動画に
癒されたことのある人も多いでしょう。
今回の記事の実験成果によって鳥インフルエンザのリスクが
低減されることはもちろん望ましいですが、
家畜を集約的に飼育すること自体が動物にとって
ストレスであり、ウィルスを無意識に増幅させている
可能性があります。
感染症の制御を含めて、我々が、そして次の世代が安心して
暮らしていくために持続可能な社会への取り組みが今必要です。
この時代を生きている私たち一人一人の行動で
感染症に負けない、人と環境、そして動物たちに
優しい社会を作っていきましょう。
コロナウィルスによる肺炎の影響で、多くの人が
ストレスを感じている昨今、いかがお過ごしでしょうか。
ストレスは免疫力の低下にもつながるので、
自分にあったストレス発散方法を見つけて、
この状況に対応したいものですね。
職場や家など室内にいる時間が長くなっているので、
市場であまりがちなお花を飾るのもいいかもしれません。
コロナウィルスが1日も早く収束することを祈っています。
今回は2019年12月6日のWorld Poultryの記事をご紹介します。
「成長の遅い鶏種(肉用鶏)の肉の評価」
“Evaluation of meat from slow-growing broilers”
これまでブロイラー産業では、いかに飼育期間を短くし、
効率的に回転数を増やすかが重視されてきました。
ブロイラーでは一般的に約55日間で出荷体重
約3kgになります。急速な成長が原因とされる脚弱やポックリ、
代謝性疾患などが問題視され、
最近ではアニマルウェルフェアへの対応のため、
育種会社も成長速度の遅い鶏種の開発を始めているようです。
アニマルウェルフェアの観点からだけでなく、
肉質の評価も気になるところ。
ちなみにイシイでは一般のブロイラーよりも成長速度が遅く、
国産鶏種の「たつの」「はりま」の開発に先進的に取り組んでいます。
詳細はこちらhttp://www.nlbc.go.jp/hyogo/kokusankei/jirei/tatsuno/index.html
以下ご参照ください。
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【翻訳文】
「成長の遅いブロイラーの肉の評価」
鶏を半集約的なシステムで成長させ、成熟させるために
より多くの時間を与えることにより、
成長の遅い鶏の筋肉の異常を減らすことができると
考えられています。最近の研究では、商業用ブロイラーと比較して、
成長の遅いブロイラーの肉の枝肉の品質、組成、
消費者の評価を行われています。
動物性タンパク質の主な供給源としての鶏肉に対する
消費者の需要は、世界中のブロイラー産業の成長に貢献しています。
過去数十年で、ゲノミクス、管理慣行、および栄養の改善により、
現代のブロイラーはより速い速度で成長し、
早ければ5〜6週間で市場重量(2 kg)に達することができます(*1)。
ニワトリの筋肉異常
最近の研究は、急速に成長する鶏では、集中的な筋肉成長が
木質の胸肉や白い縞模様などの筋肉異常の増加を引き起こすことを
示唆しています。したがって、鶏を半集約的なシステムで成長させ、
成熟させるためにより多くの時間を与えると、
筋肉の異常が軽減されると考えられています。
成長の遅いブロイラーに対する需要の増加
成長の遅いブロイラー鶏の市場需要は着実に増加しています。
この需要を満たすために、成長の遅いブロイラーの
新しい系統が導入されています。Indbro(*2)の有色ブロイラーは、
成長の遅いブロイラー肉の需要を満たすために
開発された系統です。
成長の遅い鶏種の肉質
成長の遅い品種の肉は、従来の鶏の品種の肉よりも柔らかく
ジューシーではなく、消費者の好みは、実際の感覚特性ではなく、
認識とラベルの影響を受ける可能性があります。
新しいブロイラー系統
在来の鶏および商業用の急速に成長するブロイラーの代替として
導入された、新しいブロイラーの系統は、在来種の熱帯適応性、
耐病性、およびカラフルな羽毛を使用し、同時にブロイラーの
飼料効率と成長率を備えています。
この新しい代替系統は、生産者と消費者の両方が十分な
情報に基づいて意思決定しできる点で評価される必要があります。
(つまり、新しい成長の遅いブロイラーは、
生産者にとっては育てやすく、消費者にとっては鶏が健康で
安心であるという情報が双方に必要で、
その点も評価される必要がある。)
おいしい代替
この研究は、成長の遅い鶏種と商用ブロイラー鶏の肉の品質、
組成、および消費者の好みを比較するために行われました。
成長の遅い鶏種 vs商用ブロイラー
成長の遅い鶏は、多色のインドブロ系統に由来していました。
市販の白色ブロイラー(vencobb系統)の重量は約2.0 kgで、
36日齢でした。歩留まりの割合、胸肉の収量、肉の骨の比率、
筋肉繊維の直径は、市販のブロイラーで高くなりました。
しかし、ドラムスティックと胸肉の調理収率は、
2つの遺伝子型間で有意な差はありませんでした。
太もも肉のせん断力値とタンパク質含量は、
市販のブロイラーと比較して成長の遅いブロイラーで高く、
成長の遅いブロイラーの胸肉の総脂肪酸および
飽和酸含量は有意に低くくなりました。
消費者の選択
消費者の合計67%が、成長の遅いブロイラー肉から調製した肉
および肉製品を好み、簡単なトレーニングを受けたパネリストは、
成長の遅いブロイラーの肉と商用的で成長の速いブロイラー肉を
区別できました。
成長の遅いブロイラーの肉および肉製品のすべての官能特性は、
市販のブロイラー肉の官能特性と同様でした。したがって、
成長の遅いブロイラーの鶏肉は、消費者が望むと思われるおいしい、
代替可能な鶏肉を提供できる可能性があります。
*1:一部の商品を除き、ブロイラーの出荷体重は日本では約3kg、
欧米では約2kgが主流。
*2:2000年に設立されたインドのプライベートカンパニー。
主に高温多湿で、低栄養の飼料や低レベルの感染症にも耐えうる肉用鶏と
採卵鶏の基礎鶏の開発と研究に取り組んでいる。
東京2020オリンピック・パラリンピックを目前に
SDGs(持続可能な開発目標)にも注目が集まっています。
その一つに、「つくる責任、つかう責任」という目標があります。
消費者として、目の前の商品が作られた背景にも気をかけたいですね。
2020年になりましたね。いよいよオリンピックイヤーとなり、
アニマルウェルフェアは日に日に注目度が増しているように思います。
EUでも家禽のウェルフェアを改善するための飼育方法や評価方法を
研究および技術開発をして、その情報を公開する新たな協会が発足するようです。
2019年10月14日のWorld Poultryの記事の英訳です。
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EUにおける新たなウェルフェアセンター
(原文:New EU welfare resource)
欧州委員会は2020年に家禽のウェルフェアのためのレファレンスセンターを
立ち上げる予定だ。
レファレンスセンターは、アニマルウェルフェアを公的にコントロールする
加盟国に対して、技術的支援や援助をすることで、動物福祉法律の強制力を
改善することを目的としている。
彼らは、科学的および技術的なノウハウを共有し、また、動物のウェルフェア
レベルを改善するための方法や評価する方法の研究開発の実行を行ない、
最優良事例を周知することも目的としている。
豚に関する同様のセンターが2018年末に発足し、
EURCAW-Pigs resourceとして知られている。これはワーゲンニンゲン家畜研究所
(オランダ)、フリードリヒ・レフラー研究所(ドイツ)そしてオーフス大学動物科学研究科
(デンマーク)の間の協会である。
ブロイラーと採卵鶏に関する同等のものが2020年初めには公表される。
それらはフランスの食品、環境、労働安全衛生庁(フランス)、国立農業技術研究所(スペイン)
オーフス大学動物科学部(デンマーク)、実験的動物予防研究所(イタリア)の間の協会である。
協会が公表されたら、技術的な内容も追っていきたいと思います。
秋も深まり、寒さも日に日に厳しくなってきたこの頃ですが、
皆様いかがお過ごしでしょうか。
先月の台風19号等で被害に遭われた皆様におかれましては、心よりお見舞い申し上げます。
同業者におかれましても、大小様々な影響を受けられた方も多いと思います。
岩手県では59000羽のブロイラーが死亡したとのニュースもあり、衝撃を受けました。
1日も早く復旧が進むことを祈っております。
さて、このような天災は起こってほしくないものですが、今やどこで水害、地震、火災が起きてもおかしくありません。
最近は特に乾燥しているのでボヤには注意したいですね。
そんな、まさか!が起きてしまった時、一番困るのは現場です。
まず人命の安全が確保出来たら、家畜のウェルフェアを確保しましょう。
・停電したら?
・電話回線が混み合って電話での指示を仰げなかったら?
・餌の運送が止まったら?
・いつも使っている道路が使えなかったら?
・換気扇が動かなかったら?給水器や給餌器が動かなかったら?
夏場と冬場の場合に分けて、対策を考えるとさらに安心ですね。
少しでも不安材料を減らすため、今一度危機管理マニュアルを見直してみませんか。
あけましておめでとうございます。
本年もイシイブログをよろしくお願いたします。
さて、今年初の投稿は弊社社長が鶏卵肉情報2019年新春特大号に投稿しました
「韓国における採卵鶏のアニマルウェルフェア(AW)の動向」についてご紹介したいと思います。
記事は下記のリンクよりご覧ください。
韓国の採卵鶏養事情、関連する法律、市場の動きなど多角的に調査された報告です。
https://drive.google.com/open?id=1dt3_bSF48YUtSbhheaJ7n1AJbGvWxeRy
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